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最高裁判所第三小法廷 昭和36年(あ)1776号 決定 1961年11月21日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松永東、松永光、同縄雅登の上告趣意第一点について。

所論は、単なる訴訟法違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(なお、刑訴一九七条は、捜査については、その目的を達するため必要な取調をすることができる旨を規定しており、同条は捜査官の任意捜査について何ら制限をしていないから、同法一九八条の「被疑者」という文字にかかわりなく、起訴後においても、捜査官はその公訴を維持するために必要な取調を行うことができるものといわなければならない。なるほど起訴後においては被告人の当事者たる地位にかんがみ、捜査官が当該公訴事実について被告人を取り調べることはなるべく避けなければならないところであるが、これによって直ちにその取調を違法とし、その取調の上作成された供述調書の証拠能力を否定すべきいわれはなく、また、勾留中の取調べであるのゆえをもって、直ちにその供述が強制されたものであるということもできない。本件において、第一審判決が証拠に採用している所論被告人の検察官に対する昭和三五年九月六日付供述調書は、起訴後同年九月七日の第一回公判期日前に取調がなされて作成されたものであり、しかも、右供述調書は、第一審公判において、被告人およびその弁護人がこれを証拠とすることに同意している。したがって、原判決には所論のような違法は認められない。)。

同第二点は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張であり、同第三点は、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐)

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